2012年8月31日金曜日

1981  北部にも新しい波 やんばる展



やんばる展 1981年 琉球新報紙上ギャラリー


北部にも新しい波

 子供達がわいわい言いながら絵をみている。赤ちゃんをおぶったお母さんが「静かにしなさい」とたしなめる。
 「うぬいーや、ちむえーわからんさあ、」「うぬちゅーぬいー、くじゅとぅ、ゆかい、かわいそおわんな」お年寄りが絵をみて、気軽に話している。
 展覧会となると、一部の愛好者や関係者が訪れるもので、一般市民には縁がないように思われがちであるが、やっと、市民の生活に溶けこみはじめてきたようだ。
 北部会館、国頭教育事務所の二階ホールの他に、今年は、旧市役所の一階が展示場として新たに加えられたので、書道、写真、絵画の各分野の展示が、去年の二倍から三倍の規模に拡大した。
 私も参加した絵の分野でいうと、第一回では十六点、数名の展示者にすぎなかったのが、今回は八十五点、六十四名に及び、二五〇号に相当する大作をはじめ、100号以上が13点、50号以上となると32点に達した。100メートルをこえる壁面が、見ごたえのある展示となった。
 出品者も、有名無名、名護市をはじめとして、北は国頭村から南は金武町の各市町村に及び、伊江島からの出品も多くなった。作品は抽象・シュル・具象とバラエティに富む。応募作品は、みな展示する、いわゆる、アンデパンダン方式なので、質的な差はまぬがれないが、全体的に、参加してよりよい作品にしてゆこうという気迫に溢れ、自由なすがすがしい気にみちていた。
 来場者も、子供から老人まで、中には外人や中南部の方もみられ、なかなかの華やかさであった。芳名簿に書名した方だけでも三会場で6,500名もあり、今までになく盛会であった。
 新しい文化の波が、高くわき上がるというには、まだまだ程遠いものがあるとはいえ、その波がおこりつつあるといえるのではないだろうか。
 創作品を展示する場があれば、かなりの展覧会が可能である。その点、今回思いきって会場を拡大したことは意義があった。
 古我知や江洲をはじめ、北部各地で陶芸活動は旺盛で着実に力をつけている。芭蕉布を中心とする染織、芭蕉、あだん葉、竹、木を材料とする民芸は、やんばるならではのすばらしいものがある。民芸は地域とのかかわりが深いだけに、これから量的にどう拡げるかが課題であろう。
 「北部混声合唱団」演劇団「山原船」「民話の会」「山原の自然を守る会」をはじめ、多くの活動が存在している。日常的に学習し、練習し、情報を交換する場、そしてその成果を発表し、広く一般市民と交流する「カルチャアセンター」のようなものがあるならば、人々の悲しみやよろこびを秘めた、力強い、新しい文化の波が北部にもたかまり、村づくりや町づくりに大きな活力を与えるものと確信する。 (社団法人・美術同好会サロン・デ・ボザール評議員)